〜〝くれよんのけんか〟から伝えた、多様性とやさしさのこころ〜
近頃、私は人権擁護委員としての活動の一環で、保育園や幼稚園に伺い、人権教室を行っています。
初めて訪れた保育園では、年長さん15人を前にした、あたたかくてゆったりした時間でした。
そして先日は、なんと180人の園児を前に、『くれよんさんのけんか』という紙芝居を読ませていただきました。
「ちがいを認め合うこと」「みんなが大切な存在であること」を子どもたちに伝えたくて、このお話を選びました。
この紙芝居は、赤いくれよんと黄色いくれよんがけんかをしてしまうところから始まります。
でも、それぞれに“ちがう良さ”があることに気づき、最後には仲直りするお話です。
読み終えたあと、私は子どもたちに問いかけました。
「お話に出てきたクレヨンさん、いろいろな色があったね。どんな色があったかな?」
子どもたちは、「あかー!」「きいろー!」と元気いっぱいに答えてくれました。
…実はこの問いかけの前に、少しだけ準備をしていました。
“ちがいを認め合う”という言葉は、園児たちにとってはまだ難しい表現。
だからこそ、園長先生に事前に相談し、「園児たちに伝わる言葉」を一緒に考えていただきました。
そのおかげで、当日も無理なく、子どもたちに届けることができました。
私は、こんなふうに話しました。
赤は赤でいいところがあるよね。黄色は黄色でいいところがあるよね。
それぞれが自分の良さを持っているからこそ、にっこりできたんだよね。
この時間では、一方的に話すのではなく、子どもたちと一緒に感じ、一緒に考えることを大切にしました。
たとえば、「みんなの好きな色は?」「もしお友だちとけんかしちゃったらどうする?」と問いかけながら、
紙芝居のお話を、自分ごととして感じてもらえるように工夫しました。
私はさらに続けました。
ここにいるみんなも、お顔が違うよね?それは、みんなが違うってこと。
それぞれがいいものをたくさん持っているから、その〝いいもの〟を大事にしてね。
みんな違って、みんないいんだよ。
最後に、手作りのメッセージ「みんなちがって、みんないい」の言葉を、会場のみんなで一緒に読みました。
そのときの子どもたちのまなざしはとても真剣で、
小さな心の中に、“ちがいを受け止める種”が確かに芽生えていることを感じました。
「ちがうからこそ、すてき」が伝わる子育てを
子どもたちは日々、友達とのやりとりや小さなけんかを通して、「自分と相手はちがう」ことを学んでいきます。
でも、“ちがう”ことを否定される経験が積み重なると、「自分はだめなんだ」と感じてしまうこともあるかもしれません。
だからこそ、大人はこう伝えていきたい。
「ちがうからこそ、すてきだよ」
その子だけが持つ色、その子だけの個性を、
「あなたはあなたでいいんだよ」と受けとめていくこと。
それが、子どもたちの自己肯定感や思いやりを育てる根っこになると、私は信じています。
おうちでもできる、親子間のポジティブな声かけ
子どもの「いいところ」に注目して、親子でたくさん会話してみましょう。
ちいさな「いいね」を言葉にするだけで、子どもはニコニコ、自信が芽生えます。
「〜してくれてお母さんはうれしいな」
「そのアイデア、すごく面白いね」――
人の良いところを見つけるというのは、実は自分の心にもやさしいこと。
自然と気持ちがほぐれて、穏やかな気分になれるのです。
さらにこの「いいところ探し」を重ねていくうちに、
子どもが自分と違う誰かの良さにも気づけるようになっていきます。
それは、多様性を大切にできる感性につながっていくのではないでしょうか。
「いいところ探し」は、親子の関係を深める魔法の時間でもあるのです。
多様性とは、あたたかいまなざし
多様性とは、難しい言葉ではなく――
「みんなちがって、みんないい」
そのシンプルな一言に込められた、あたたかいまなざしだと思います。
これからも子どもたちと一緒に、大人もそのまなざしを育てていけたらいいですね。
もし子育ての中で、「ちがうって、すてき」。
そう思えなくなってしまった日も、どうか一人で抱え込まずに。
いつでも「Kinako/きなこ」に、お気軽にお話しに来てくださいね。
カウンセラー 石崎由真

子育て支援カウンセラーとして安心な存在でご相談者様に寄り添い、素敵な未来へサポートできることを大切にしています。現在は、小学校で心の教室相談員をしながら児童に関わっています。着任当時は荒れていた子も等身大の視点で向き合うことによって、どんどん良くなっていきます。以前、小学校で重度自閉症児童の介助員として現場で4年間、学校生活支援を務めた経験もあり、発達障害の特性も理解しています。地域では民生児童委員、人権擁護委員として困っている人の支援にも携わっています。どんな些細なことでも、私に相談してください。あなたの不安や辛さに親身に寄り添い、解決の糸口を一緒に見つけて、より良い未来へと共に歩んでいきましょう。